ハイハイの期間は運動発達に影響する?独り歩きの時期との関係を理学療法士が解説

子どもの発達

ハイハイの期間は運動発達に影響する?独り歩きの時期との関係を理学療法士が解説

結論を先にお伝えします

「ハイハイをしていた期間の長さ」そのものより、独り歩きを含む運動の節目(マイルストーン)が極端に遅れていないかのほうが、その後の運動発達の目安になります。

ただし大事な前提があります。正常な範囲のなかでの「少し早い・少し遅い」は、将来の運動能力や賢さをほとんど予測しません。 歩き始めが平均より少し遅くても、過度に心配する必要はないということです。

理学療法士として、そして3児の母として、ここを混同しないことがいちばん大切だと感じています。順番に見ていきましょう。

ハイハイの「期間」は、その後に関係するの?

まず気になるのが「うちの子、ハイハイが長い(または短い)けど大丈夫?」という点ですよね。

約8,400人の子どもを追った大規模研究では、ハイハイの開始が遅いことと、就学前後の運動の苦手さ(発達性協調運動症=DCD)には弱い関連が見られました。さらに、ハイハイから独り歩きへ移る期間が長くかかるほど、運動の困りごとが見られる割合がやや高まる傾向もありました(移行が1か月延びるごとに、全体の運動の困りごとリスクが数%上昇)。

ただしこれは「ハイハイ期間が長いと運動音痴になる」という意味ではありません。移行に時間がかかること自体が、もともとの発達のゆっくりさを映し出している“結果”の可能性が高いからです。ハイハイ期間の長さは、原因というより目安として見るのが正解です。

ちなみに、ハイハイを「ほとんどせずに歩いた」子も一定数いて、その多くは問題なく育ちます。ハイハイは飛ばしてもいい場合がある一方で、ハイハイ経験そのものは、左右の手足を協調させる感覚運動の発達を後押しすると考えられています。「した・しない」で白黒つけるより、いろいろな動きを経験できたかが大切です。

ハイハイと体幹の関係|「使う」根拠はある、でも「唯一」ではない

「ハイハイの交互運動が体幹を育てる」とよく言われますよね。これは半分ほんとうで、半分は言いすぎ、というのが正確なところです。

裏づけがある部分から。四つ這い(手と膝)で進む動きは、右手と左足、次に左手と右足というクロスパターンで、体を支え・回旋させ・重心を移しながら前進します。これには体幹の動的な安定性が欠かせません。筋電図(EMG)と動作解析の研究では、ハイハイが四肢と体幹の「筋シナジー(協調パターン)」で成り立っていること、そして発達に遅れのある子ではそのパターンが少なく、動きの滑らかさが下がり、余分な力みが増えることが報告されています。つまり、ハイハイが体幹・姿勢制御の働きを実際に使っていること、その質が発達状態を映すことは根拠があります。

一方で気をつけたいのは、「ハイハイをしないと体幹が育たない」という断定です。体幹(姿勢制御)は、うつ伏せ・座位・立位など、ほかの抗重力姿勢でも育っていきます。だからこそ、ずり這い中心やハイハイをほとんどしなかった子でも、体幹はちゃんと発達します。ハイハイは体幹を育てる有力な経験のひとつであって、唯一の手段ではない——ここを押さえておくと安心です。

独り歩きの「開始時期」のほうが影響は読み取りやすい

同じ研究では、独り歩きの開始時期のほうが、ハイハイの開始時期よりも後の運動の苦手さと関連が強いという結果でした。歩き始めが遅いほど、就学前後で運動の困りごとが見られる割合が高まる傾向がはっきり出ています(参考までに、研究での平均は、ハイハイ開始8.1か月・独り歩き12.6か月)。

つまり、節目のなかでも「独り歩き」は発達の状態を映しやすいサインということ。極端に遅れている場合(たとえば1歳半を過ぎても歩く気配がないなど)は、念のため専門家に相談する価値があります。

でも「正常範囲」なら、時期で心配しすぎないで

ここがいちばんお伝えしたいところです。

健康な未就学児を調べた別の研究では、**歩き始めの時期は、将来の運動能力や認知能力の「あてにならない予測因子」**だと結論づけられています。遅めに歩いた子で、バランスや手先の器用さ、視知覚や注意力がほんの少し低めという弱い傾向は見られたものの、集団としての“傾向”であって、一人ひとりの未来を決めるものではありません。

10か月で歩いた子も、15か月で歩いた子も、正常範囲のなかであれば、その後はぐんぐん伸びていきます。「早く歩いた=運動が得意になる」でもありません。時期の数か月差に一喜一憂しなくて大丈夫です。

我が家の3きょうだいの場合(体験談)

ここで、我が家の3人の実例を正直にお話しします。

1人目は、ハイハイをしっかり経て、11か月で独り歩きを開始。3人目も同じくハイハイから、12か月で歩き始めました。おもしろいのは2人目で、この子はハイハイ(手と膝で進む形)をほとんどせず、お腹をつけて進むずり這いが中心。それでいて、3人のなかでいちばん早い9か月で歩き出しました。

同じきょうだいでも、移動の「型」も「時期」もこんなにバラバラ。しかも、ずり這い中心だった2人目が最初に歩いたのです。「ハイハイをたっぷりした子が早く歩く」わけでも、「ずり這いだと遅れる」わけでもありませんでした。

そして今、3人とも元気に走り回っています。あのとき時期や型を気にして比べていたことが、少し懐かしく感じるくらいです。研究が示す「正常範囲のばらつきは将来を予測しない」を、母としても実感しています。

家でできること(時期を急がせない関わり方)

時期を早めようと練習させるより、いろいろな動きを安全に経験させることが、その後の運動発達にいちばん効きます。

うつ伏せ遊びでしっかり体を支える時間をつくる、ハイハイで追いかけっこをして全身を使う、よじ登る・またぐ・しゃがむといった動きを日常に散りばめる——こうした「多様な運動経験」が、バランスや協調性の土台になります。歩行器でゴールを急ぐより、床でたっぷり動ける環境のほうが発達には味方です。

まとめ

ハイハイ期間の長さは「原因」ではなく発達の「目安」。後の運動発達との関連がより読み取りやすいのは独り歩きの開始時期ですが、それも正常範囲のなかでは将来をほとんど予測しません

数か月の早い遅いより、毎日の遊びのなかで多様な動きを積み重ねること。それがいちばんの近道です。気になる遅れがあるときだけ、気軽に専門家へ相談してくださいね。


※本記事は一般的な発達の情報をまとめたもので、診断や個別の医療アドバイスではありません。お子さんの発達に気になる点があるときは、かかりつけ医や地域の保健センター、小児を専門とする理学療法士などにご相談ください。

参考文献

  • Early Motor Milestones in Infancy and Later Motor Impairments: A Population-Based Data Linkage Study(中国・約8,395人のデータ連結研究) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8841506/
  • Walking onset: a poor predictor for motor and cognitive skills in healthy preschool children(BMC Pediatrics, 2021) https://bmcpediatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12887-021-02828-4
  • Early infant crawling experience is reflected in later motor skill development(PubMed) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2038537/
  • Inter-Limb Muscle Synergies and Kinematic Analysis of Hands-and-Knees Crawling in Typically Developing Infants and Infants With Developmental Delay(PMC6198063) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6198063/
  • Motor Skill Development Alters Kinematics and Co-Activation Between Flexors and Extensors of Limbs in Human Infant Crawling(PubMed) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29641382/

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